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建設コンサルのプロポーザル敗因は「コピペ感」にある。生成AIを「優秀な壁打ち相手」にする基本アプローチ

作成者: 田邊 慎太郎|2026/10/04 15:30:39

第1部:プロポーザルの「勝率」を劇的に変えるAI活用戦略(全4本)


✓建設コンサルのプロポーザル敗因は「コピペ感」にある。生成AIを「優秀な壁打ち相手」にする基本アプローチ
✓「仕様書の裏の意図」を暴く:生成AIに辛口審査員を演じさせ、プロポーザルの弱点を潰すプロンプト術
✓10分のヒアリングで審査員を唸らせる!AIを使った「エレベーターピッチ・想定Q&A」の事前準備
✓「絵に描いた餅」と言わせない。プロポーザルの技術提案に自社の「AI PoC実績」を自然に溶け込ませるストーリー設計

 

 

「実績は十分にある。技術的な内容にも自信がある。それなのに、プロポーザルで選ばれない」。そんなときに見直したいのが、提案書からにじむ「コピペ感」です。

もちろん、選定結果は実績や体制、技術提案など、複数の要素に左右されます。敗因を一つに断定することはできません。ただ、過去の提案書を整えて提出するだけでは、今回の業務について何を考えたのかが伝わりにくくなります。

生成AIを使えば、この問題を解決できるのでしょうか。答えは、使い方次第です。「提案書を書いて」と丸投げすれば、読みやすくても、どこかで見たような文章になる可能性があります。

大切なのは、AIを代筆者ではなく、自分たちの考えを掘り下げる「優秀な壁打ち相手」として使うことです。

 

1.「コピペ感」の正体は、案件とのつながりの薄さ


コピペ感とは、単に同じ文章を使っていることではありません。提案の中に「なぜ今回、この方法を選ぶのか」という説明が足りない状態です。

例えば、次のような表現があります。

 

✓ 「地域特性を踏まえた検討を行います」

✓ 「関係機関との円滑な協議を図ります

✓ 「豊富な実績を活用し、高品質な成果を提供します」

 

どれも間違った表現ではありません。しかし、対象地域の何に着目するのか、どの協議が難しいのか、過去の経験をどう応用するのかが見えなければ、別の案件にも使える文章になってしまいます。

過去資料の再利用自体は合理的です。標準的な手順や品質管理の仕組みまで、毎回ゼロから考える必要はありません。問題は、再利用できる部分と、今回の条件に合わせて考え直す部分を区別しないことです。

 

提案書で伝えたいのは、次の三点です。

 

✓ この業務を理解していること

✓ この条件で実行できること

✓ この方法を選ぶ理由があること

 

表現を新しくするだけでは、この三点は補えません。文章を整える前に、提案の論理を点検する必要があります。

 

2.最初にAIへ渡すのは、過去の提案書ではなく今回の条件

 

AI活用の出発点は、文章生成ではなく情報整理です。まずは業務説明書、仕様書、評価基準、公開資料などから、今回の提案に関わる条件を整理します。

整理する項目は、業務の目的、求められる成果、対象地域の条件、工程上の制約、関係者、評価項目です。そのうえで、確認できた事実、自分たちの解釈、未確認事項を分けておきます。この区別が曖昧だと、推測がいつの間にか提案の前提になってしまいます。

例えば、AIには次のように依頼できます。

以下の資料から、業務目的、成果物、制約条件、評価項目を整理してください。資料に明記された事実と推測を分け、根拠となる箇所を示してください。不明点は補完せず、確認事項として列挙してください。

ここでAIに任せるのは、資料の読み取りの補助です。AIが挙げた根拠は、必ず原文に戻って確認します。読み取れなかった図表や別紙がないかにも注意が必要です。

過去の提案書は、その後に参照します。今回の条件を先に整理しておけば、「似ているから使う」ではなく、「どの条件が共通しているから使えるのか」を判断できます。

 

3.自分たちの仮説を出してから、反論を求める

 

壁打ちの中心になるのは、技術者自身が持つ課題仮説です。「今回の難所は何か」「発注者が判断に迷うのはどこか」「工程を左右する条件は何か」。まずは箇条書きで構いません。

例えば、橋梁の維持管理に関する業務で、「点検結果を整理するだけでなく、対策の優先順位を説明できることが重要だ」と考えたとします。この仮説をAIに渡し、賛同ではなく検証を求めます。

 

> この課題仮説について、資料から確認できる根拠、根拠が不足している点、別の解釈が成り立つ点を挙げてください。提案の前提として採用する前に、確認すべき事項も示してください。

 

AIの回答を読み、仮説を採用するか、修正するか、保留するかを決めるのは人間です。もっともらしい反論でも、現場条件に合わない場合があります。逆に、耳の痛い指摘が、提案の弱点を見つけるきっかけになることもあります。

大切なのは、AIに「正解」を出させることではありません。自分たちが暗黙の前提にしていたことを言葉にし、その妥当性を確かめることです。説明できない前提を減らすほど、提案の筋道は明確になります。

 

4.「なぜその方法か」を、代替案との比較で深める

 

提案を一般論で終わらせないためには、方法を列挙するだけでなく、その選択理由を示す必要があります。「現地調査を行う」「データを分析する」「関係者と協議する」だけでは、業務手順の説明にとどまります。

そこで、AIに複数の進め方を比較させます。

 

#プロンプト#
この課題に対する進め方を三案挙げ、必要な情報、工程への影響、実施上のリスク、成果物への反映方法を比較してください。与えた条件では判断できない点を明記し、特定の案を無条件に推奨しないでください。

 

比較すると、提案の判断軸が見えてきます。既存資料をどこまで活用するか。追加調査をどの条件で行うか。協議をどの段階に置くか。こうした判断を業務目的や制約と結び付けることで、その方法を選ぶ理由を説明しやすくなります。

ただし、提案は目新しければよいわけではありません。実施できない高度な分析や、体制に見合わない調査を盛り込めば、実現性の説明が難しくなります。自社が責任を持って実行できる範囲で、今回の条件に適した方法を選ぶことが重要です。

過去の実績も同じです。件数を並べるだけでなく、「類似業務で得た知見のうち、今回に使えるものは何か」「条件が異なるため、そのまま使えないものは何か」を説明します。経験を今回の判断に結び付けてこそ、実績が提案の裏付けになります。

 

5.評価者役のAIに、提案の弱点を指摘させる

 

課題と方法が整理できたら、AIに評価者の視点を与えます。ただし、「何点取れるか」を予測させるよりも、提示された評価基準に照らして、説明不足を洗い出す使い方が適しています。

 

#プロンプト#
> 以下の評価基準と提案骨子を照合してください。各項目について、対応する記述、説明が不足する点、根拠が必要な主張、実現性を判断できない点を整理してください。実際の審査結果や得点は予測しないでください。

 

例えば、「協議を円滑に進める」と書いているなら、誰と、何を、いつ確認するのかまで説明できているでしょうか。「品質を確保する」と書いているなら、照査の対象、時期、担当、修正の流れが具体化されているでしょうか。

ヒアリングを想定した質問を作らせるのも有効です。「追加調査が必要になった場合、工程をどう管理するか」「資料の不足が判明した場合、どう対応するか」。こうした問いに答えることで、文章だけでは気付かなかった弱点が見えてきます。

AIの指摘をすべて採用する必要はありません。評価基準との関係が薄い指摘や、過剰な提案を求める指摘は退けます。採否の理由をチームで共有すれば、提案書の内容だけでなく、説明時の認識もそろえられます。

 

6.文章化は最後。「課題・方法・理由・成果」の順に書く

 

論点が固まった段階で、初めて文章化を依頼します。その際は、課題、対応方法、採用理由、成果へのつながりを一組にして渡します。

例えば、次のような依頼です。

 

#プロンプト#
以下の骨子だけを使い、技術提案の文章を作成してください。課題、対応方法、採用理由、成果物への反映が分かる順序にしてください。未確認の数値、実績、効果、技術的条件は追加しないでください。抽象的な表現は、具体化に必要な確認事項として示してください。

 

仮の例で考えてみましょう。

「地域特性を踏まえ、適切に調査します」という文章だけでは、具体的な判断や行動が見えません。これに対し、次のように書くと、何を考え、どう進めるのかを読み取れます。

 

#プロンプト#
冬期に現地確認が難しくなる条件を想定し、既存資料で確認できる事項と現地確認が必要な事項を着手時に切り分け、調査時期を工程に反映します。

 

もちろん、実際の案件で冬期の制約が確認されていなければ、この文章は使えません。具体的に見える文章と、根拠のある文章は別です。AIが加えた具体性を、そのまま事実として扱わないようにしましょう。

最後に、「地名や業務名を差し替えるだけで、他の案件にも使えないか」と問い直します。使えてしまう段落は、今回の条件や判断理由とのつながりを再確認する候補です。

 

7.安全に使い、判断の責任は手放さない

 

壁打ちの質を高めるには、入力情報の管理も欠かせません。未公表資料、個人情報、契約上の秘密、自社の独自ノウハウなどを扱う際は、利用するAIの契約条件や社内ルール、発注者との取り決めを確認します。

まずは公開資料から試し、必要に応じて匿名化や情報の切り分けを行う進め方が現実的です。

また、AIが示す技術基準、制度、数値、出典は、原典で確認します。発注者がAI利用に関する条件を設けている場合は、その条件にも従います。提出前には、提案内容が実施体制、工程、成果物と整合しているかを担当者が確認してください。

最初から全文をAIで作る必要はありません。次の案件の重点テーマを一つ選び、次の三つを試してみましょう。

 

✓ 課題仮説への反論

✓ 代替案の比較

✓ 評価基準との照合

 

対話の前後で、採用理由や確認事項が明確になったかを見れば、AIを活用する意味を確かめられます。

コピペ感をなくすために必要なのは、文章を飾ることではありません。今回の業務をどう理解し、何を判断し、どう実行するのかを具体化することです。

生成AIは、その思考を問い直す相手として使いましょう。提案の核を技術者自身が持ち続けることが、案件に向き合った提案書を作る基本アプローチです。