道路や河川の調査、設計に関わっている技術者の方は、googleマップのお世話になっていたのではないでしょうか。「なっていた」過去形で書いたのは、googleマップはしばらく使えなさそうだ、ということで、その現状と対策をまとめました。
cover story "建設コンサルタントに勤める佐藤康平さん(仮名)。日々、クライアントからの電話問い合わせと緊急の依頼に対応しています。道路設計に関わっているため、現場に足を運ぶことが基本だと頭ではわかっているものの、なかなかその時間をつくることができません。そんな時に重宝していたのが、googleマップでした。googleマップやストリートビューで現地確認し、打ち合わせ用資料に使っていました。しかし、ある時、googleマップを見ていると、道路の中央分離帯が歪んでいることに気づきます。こんな地図じゃクライアント提出用の資料に使えないよ〜。と思った佐藤さんにいくつかの対策をお伝えしました。もしかしたら、あなたのお役にたつかもしれません。" |
目 次 |
1.そもそも地図って?
そもそも地図ってどのようにつくっていたのでしょうか。
今から30年ほど前、地図はまだ職人さんが手で書いていました。
もう時効だと思いますし、残念ながら、その会社は倒産してしまいましたので、少しだけ地図のデジタル化についてお話しします。高校3年生の私は、過酷な受験戦争を避け、大学に推薦で合格しました。高校3年生の12月のことです。周りの友達が受験勉強する中、私は時間を持て余し、アルバイトを探します。その時、唯一、高校生を雇用してくれた会社が、地図を作成している会社でした。
私の仕事は、PC9800シリーズにつながれたデジタイザーというマシンに向かって、日々、地図をデジタルデータとして入力する仕事です。今から約30年近く前、そのような仕事がたくさんありました。それまで紙に印刷されていた地図は、約30年前に数社の尽力でデジタル化されていきました。10年は言い過ぎですが、5年以上は費やしていたと思います。
このデジタル地図がベースになって、その後、何回刷新されたかわかりませんが、どんどん精度が上がり、(一財)日本デジタル地図協会が設立され、GISも安価になり、オープンソースのGISが出てくるなどしました。
そして、とうとう、Googeがデータオリエンテッドなマップを公開しました。←今ここです。
2.以前のgoogleマップと今のgoogleマップ
①以前のgoogleマップ
以前のgoogleマップは、株式会社ゼンリンが提供する地図データをベースに提供されていました。
前述したように、30年前から地図のデジタル化に取り組んだ企業で、地図に関する技術もノウハウも蓄積した企業です。ゼンリンの住宅地図は、市役所、交番、不動産屋など至る所に置いてありました。1冊1〜2万円もするにも関わらず。
このような信頼性の高い地図がベースになったゼンリンの地図は、googleが提供する距離計算、最短の時間計測、交通機関の乗り換え検索などのツールと組み合わさって非常に便利の良いものでした。また、マイマップなどを使うと、オリジナルマップを公開できるなどで、ランニングや自転車の走行経路を公開したり、自分で行った経路座標で、ハートマークを書いてプロポーズのツールにしたりといった例もありました。
それもこれも、全てゼンリンが作成した信頼性の高い座標づけがされたデジタル地図のおかげでした。
②今のgoogleマップ(2019年3月25日現在)
前置きしておくと、この記事は2019年3月25日現在に書かれたものです。(随時アップデート予定)
googleから指摘があるかもしれないことを覚悟で下記にgoogleマップをキャプチャしました。
中央分離帯の太さが変わっていたり、道路の上に建物が立っていたりと、どうにもこうにも言葉になりません。いや、文字にできません。まだ、細かいところまでは分析しきれていませんが、現在はこのような状況です。
一見すると、配色はそのままなので、違いはなさそうですが、道路が重なっていたり、道路と家が重なっていたり、中央分離帯にうねりが見られたりしています。さらに、もう少しひいた地図に国土交通省の基盤地図情報をみてみると、長橋バイパスのカーブが大きく違うことがわかります。
googleマップ(小樽市長橋付近)の状況
googleマップと国土交通省基盤地図の差異
3.当面の5つの課題
①緯度経度の精度について
いささか中央集権的ではありますが、株式会社ゼンリンが提供していた地図データは、(一財)日本デジタル道路協会が提供するデータとの連携がとれており、座標の信頼性が担保されていたと考えられます。。賛助会員一覧にも掲載されています。http://www.drm.jp/introduction/list.html
googleのチャレンジは、非中央集権型を目指しており、個人的にはそのような取り組みは歓迎すべきだと思います。
しかしながら、座標は住所よりもユニークな情報であり、今後はブロックチェーン技術でも使われていくであろうと思います。その座標の信頼性に疑念があるとすると、由々しき事態であると言わざるを得ません。
②建造物と構造物の重なりについて
座標の精度が低いことが顕著に見られたのが、建造物と構造物の重なりです。つまり、家と道路が重なっていることです。地図の目的が机上でも現地でも同じく正しい経路が辿れることだとすると、建造物と重なっている地図は地図ではありません。
③各種計測について
デジタル地図の発展は、計算技術と共にありました。最短経路探索は、ダイクストラ法が長らく使われ、コンピュータの計算速度の向上によって、瞬時に計算結果が表示できるようになりました。正確な距離と速度が備わっていなければ、正確な2地点間の時間を計測することはできません。
残念ながら、現在のgoogleマップには、その精度を期待することはできません。
④地図作成プロセスについて
地図作成プロセスは、google利用者のスマホから取得した位置情報であるとか、航空写真を自動で地図化したと言われていますが、どのようなプロセスで作成されたのか公開されていません。前述したように、30年もの歳月をかけて精度を向上してきた地図と今のgoogleマップは比較に値しません。
⑤地図の使用について
基本的には、googleは、APIsを介して利用することを前提としています。ただし、このAPIsが曲者で、突然、サービスを停止したり、規約が変更されたりします。
最近では、翻訳APIが新たな利用が停止されましたし、エンベデッドマップもディベロッパーアカウントを取らなければエラーが表示されるよ雨になりました。色々と配慮が必要すぎて、一言で言えば、使いにくいです。
4.今後、どのように地図を使っていくか
以上のように、当面、googleマップを使うことはできませんので、どのような対策をすればいいでしょうか。
弊社では、三井E&Sシステム技研株式会社の道路地図を購入し、国土交通省基盤地図情報などを利用していますので、今一度、これらを有効活用することとしています。このようなビジネスソリューションに戻ることは、QGISやOSM(オープンストリートマップ)などオープンソース化に逆行しているように思えますが、精度が命である地図情報ですので、次のような対策をとっていきます。
googleマップがもう一度、ビジネスで使えるような発展を遂げるまでは・・・
①データを購入すること(信頼性の担保)
②プライベートではデータを提供すること(マップ発展の推進)
③国土交通省基盤地図情報の徹底活用
④新しい計算アルゴリズムの導入
googleマップの利用に不安がある方は、下記にてお受けいたしますので、どんなことでもお答えいたします。
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