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【必読】zoomで移動時間を削減”1秒を削り出せ!”

 「働き方改革」関連法案2018年6月に可決・成立し、いよいよ2019年4月1日に施行されました。働き方改革は、事業主に義務が負わされる訳ですが、実際に困るのは従業員でしょう。どのような業務でITを使えば、無理なく働き方改革ができるのか整理しました。

 
目  次

1.はじめに

2.働き方改革のポイント

3.働き方改革の事業への影響

4.ITの活用で”1秒を削り出せ!”

5.まとめ

 


1.はじめに

 経営者や管理職の皆さまは、2019年4月に施行される通称:働き方改革関連法に注目されているのではないでしょうか。しかし、まだ大丈夫だろう、周りの動きを見てから取り組もう思っている方も多いのかもしれません。

 今回の働き方改革の背景には、大手広告代理店や飲食チェーンをはじめとした労働環境問題や過労死・自殺といった問題が大きいと思います。実際に、政治や行政を大きく動かしたことに間違いないでしょう。しかし、働き方改革 ~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~を見てみると少し様相が違います。

 実は、この働き方改革は、中小企業・小規模事業者を対象にしているのです。なぜなら、大企業は、労働組合の組織率も高く、長時間残業の削減にも対応してきているのです。そして、大企業では、多数の従業員を管理したり、業務を効率化するITツールも既に導入されています。

 厚生労働省は、労働者の7割を占める中小企業・小規模事業者の労働環境の改善、生産性の向上を進めることを決定しています。働き方改革は、このブログの読者の中小企業の方を主に対象としています。


2.働き方改革のポイント

 働き方改革は、大きく2つの改革です。1つは「労働時間法制の見直し」、もう1つが「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」です。平たく言えば、労働時間を短くして、同じ職務には同等の賃金を払いましょう。というものです。厚生労働省から発表されているポイントは下記のものです。

「労働時間法制の見直し」

① 残業時間の上限を規制します
② 「勤務間インターバル」制度の導入を促します
③ 1人1年あたり5日間の年次有給休暇の取得を、企業に義務づけます
④ 月60時間を超える残業は、割増賃金率を引上げます(25%→50%)
 ▶ 中小企業で働く人にも適用(大企業は平成22年度~)
⑤ 労働時間の状況を客観的に把握するよう、企業に義務づけます
 ▶ 働く人の健康管理を徹底
 ▶ 管理職、裁量労働制適用者も対象
⑥ 「フレックスタイム制」により働きやすくするため、制度を拡充します
 ▶ 労働時間の調整が可能な期間(清算期間)を延長(1か月→3か月)
 ▶ 子育て・介護しながらでも、より働きやすく
⑦ 専門的な職業の方の自律的で創造的な働き方である 「高度プロフェッショナル制度」を新設し、選択できるようにします
 ▶ 前提として、働く人の健康を守る措置を義務化(罰則つき)
 ▶ 対象を限定(一定の年収以上で特定の高度専門職のみが対象)
職場の管理職の意識改革・非効率な業務プロセスの見直し・取引慣行の改善 (適正な納期設定など)を通じて長時間労働をなくしていくことが必要です。

 

「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」

① 不合理な待遇差をなくすための規定の整備
 同一企業内において、正社員と非正規社員との間で、基本給や賞与などのあらゆる 待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。 裁判の際に判断基準となる「均衡待遇規定」「均等待遇規定」を法律に整備します。 ガイドライン(指針)※1を策定し、どのような待遇差が不合理に当たるかを明確に示 します。
② 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
 非正規社員は、正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主に対して説 明を求めることができるようになります。
③ 行政による事業主への助言・指導等や 裁判外紛争解決手続(行政ADR)※4の規定の整備
 都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行います。 「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」についても、行政ADRの 対象となります。
※4 事業主と労働者との間の紛争を、裁判をせずに解決する手続きのことをいいます。 非正規社員は、正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主に対して説 明を求めることができるようになります。


3.働き方改革による事業への影響

 会社のルールを整備している会社としていいない会社は、極端に分かれるのでは無いでしょうか。

 弊社も、創業後しばらくは、会社のルールは皆無でした。しかし、従業員が増えるに従い、または、従業員の統率がとれなくなるに従い、ルール整備が後追いで行われました。

 一般的には、就業規則から始まり、職域・職種など権限、給与などでしょう。

 しかし、労働組合がない中小企業では、36協定を結んでいない企業・労働者が多いと思います。なお、連合が2017年に行った調査「36協定に関する調査2017」によれば、45%の企業で締結しており、55%は36協定を締結していない・わからないでした。

 締結していない会社のほとんどは、締結してしまうと超過勤務手当を正確に出さなければいけない、有給を管理しなければならないなど、従業員の様々な権利を認めてしまうことになることへの不安があるのではないでしょうか。

 そのような心配をしている経営者の皆さま、残念ながら、心配したところで、もし労働基準監督署に通告されたら、払わなければならないもの払わされますので、早く従業員の労働環境を改善しましょう。それによって、安心して長く働いてくれた方が生産性が向上すると思いませんか。

 もし、超過勤務手当を払っていないような事業者でなくても、超過勤務を最小限にしたり、有給休暇であったりで、十分に業務が処理できない可能性を心配されている方も多いと思います。その場合には、従業員を増やすか、生産性を向上するしかありません。現実的に、従業員の増加は、単純に人件費が増えますし、有効求人倍率が上がっており、採用コストも増加し、競合他社より賃金も上げなければならない、「公正な待遇を確保する」ために、現従業員の賃金も上げなければならない、といった非常に複雑な問題に発展します。

 ですから、まずは、生産性向上に着手し、今の従業員数で同じ業務を最短で実施できる環境整備を考えてみてはでしょうか。今の時代、生産性を向上できるツールは、逆立ちしてもITしかありません。

 日本人のほとんどが使っているLINEはコミュニケーションを活性してくれました。例えば、孫とのコミュニケーションのために70歳を過ぎた方々も利用し始めています。ハングアウトを代表するビデオ会議ツールは、物理的な空間を無くし、情報が東京に集積するのではなく、地方と地方で先端情報のやり取りを可能にしてくれました。

 小学生がIoT機器を開発し、高校生がTik Tocで短編映像を編集し、ITがエンターテイメントにも広がりを与えてくれました。

 ITは、既に私たちが意識をしなくても、生活の一部になっています。


4.ITの活用で”1秒を削り出せ!”

 ”1秒を削り出せ!

 は、箱根駅でも強さを発揮している東洋大学陸上部駅伝チームのスローガンです。

 業務プロセスの改善とは、この言葉に尽きます。

 箱根駅伝は、片道100km超を5人の選手が走ります。区間それぞれで、コースに特徴があり、選手の個性にあわせて区間を決め、最短で100kmを走りきるのです。

 私たちは、週40時間が労働時間の制約があります。もちろん、36協定を締結してそれを解除する方法をとりますが、超過勤務は+25%の割増賃金がかかり、それを価格に上乗せできないなら利益を圧縮してしまいます。

 土日祝日が休業日の会社の場合、2019年の営業日数は244日、さらに夏や冬の特別休業、有給休暇の取得義務5日を考慮すると、230日程度と考えられます。230日×8時間=1840時間が1年間の総労働時間になります。

keisanには、色々な計算ができますのでオススメです

 箱根駅伝は、距離が制約条件で目的は最短時間で、会社は時間が制約条件で、利潤を最大化することが目的です。

 労働に着目すると、人件費もほぼ固定ですから、経費率によって必要な粗利(売上-仕入)は変わってきますが、500万円の人件費を出すためには500万円の経費がかかっているとすると1000万円の粗利が必要になりますので、1000万円/1840時間≒5500円/時となります。つまり、1時間あたり5500円稼がなければならないことになります。

■従業員の時間の使い方

 さて、みなさんは、就業8時間のうちどのようなことに時間を使っているでしょうか。

 株式会社日本能率協会コンサルティングによれば、生産財営業マンの場合、書類管理と会議に要した時間が54%、顧客と会うために要した時間19%、顧客との面会時間25%、顧客サービス2%となっています。

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https://www.jmac.co.jp/wisdom/marketing/71_1.html

 時間に関すると、約4時間を書類管理と会議、移動やアポとりに1.5時間、顧客との面会に2時間となっています。地方部になると移動時間が片道1時間というは普通なので、必然的に業務効率が下がっていくことになります。

 このままでは、いくら働き方改革を叫んでも、実施できそうになりません。 

■ITを活用した業務プロセスの改善

 この時間をITを使って業務プロセスを改善していくわけですが、どのような技術を使って改善していけばよいでしょうか。前述した調査結果を参考にすると、1つは、書類管理の時間を減らすこと、2つめは会議の時間を減らすこと、3つめは移動時間を減らすことです。

①書類管理の時間を減らす

 これにはいくつかやるべきことがあります。原則、書類を紙のまま保管することはやめましょう。必要な書類は電子化してストレージで管理すべきです。その時重要なのが、その書類をどのように管理するかです。部署ごと、顧客ごと、時系列に。部署ごとには、ファイルサーバを用意すればよく、時系列は書類を直ちに電子化すればシステムのタイムスタンプが正確な時刻をデータに刻んでくれます。顧客ごとはどうでしょうか。ファイル名に顧客名をいれるのは負担が多く、部署ごとに顧客が分かれているので、管理しているとは言い難い。このようなときには、顧客管理システム(CRM)を積極的に使いうことで、書類管理の手間をなくせます。特に、電子化の時間より、書類を探している時間を圧倒的に減らせます。

参考ブログ:HubSpot Hacks  #4 タスク機能を利用した電話メモ、不在メモ、資料の受け渡し

②会議の時間を減らす

 会議の時間の減らし方は、非常に簡単です。それは、開始終了時間の厳守、議事次第と議事録をつくることです。議事次第をつくった上での会議では、議事にあること以外を議題にしてはいけません。もし、会議にいる最高権者が、これらを守れないような組織は、働き方改革は難しいと言わざるを得ません。なお、議事録は、文書にする必要はありません。音声や映像を残しておきましょう。

③移動時間を減らす

 お客様とは、どのように打ち合わせや会議をすれば良いでしょうか。

 大雨や大雪の中、 果たしてわざわざ互いに出向いて会議をする必要があるのでしょうか。特に、移動時間が多大にかかる地方部でその移動時間は必要でしょうか。

 その移動時間は、zoomやGoogle MeetsなどのWEB会議システムで代用できないでしょうか。生産性向上に最も効くのは、この移動時間の削減ではないでしょうか。

 簡単な試算ですが、仮に①〜③が少しでも実施できたとすれば、1日の就業時間のうち40%は顧客との面会時間に使うことも可能であると思います。そのような場合、移動時間を半分にしたり、書類管理や会議を4割削減できれば、生産性を2倍近くまで向上できるかもしれません。

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生産性向上のイメージ

 


5.まとめ

 働き方改革は、現在の労働市場を鑑みると、競合他社の後追いで取り組んでも十分にメリットが得られない可能性があります。労働者は、より労働環境がよく、給与が高い企業を選びやすくなっています。また、労働者が少ない状況は、起業もしやすい環境でもあり、労働環境が悪く、給与に満足できなければ起業の道も悪くはありません。

 もし、企業に長く勤めてもらえるような若い世代を雇用したいなら、彼らは普段の生活からITを使いこなしており、それと同様な環境が無ければ、その企業で長く働くということは考えないでしょう。

 IT活用による働き方改革は、今いる従業員の働き方改革だけではなく、将来の従業員のためでもあります。早く貴社にあった改革を進めましょう。


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Topics: その他, HubSpot, 採用活動, CSR

この記事を書いた人: 田邊 慎太郎 on 2020/05/28 17:00:00

1974年生まれ。MARVELSUPPLY 代表取締役社長・MBA 大学卒業後、シンクタンク研究員を経て、同社を設立 データサイエンス分野を中心に活躍。 データに基づく分析によってお客様に理解・納得していただける 戦略や戦術の提案を心がけています。 小樽商科大学大学院ビジネススクール卒業